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Oさんの生活保護申請

生活保護申請

Oさんの生活保護申請

経 過

Oさん(74歳男性)は2008年10月24日に私の診療所を受診した。腹痛があり、癒着性イレウス状態であった。県立中央病院まで救急搬送し、入院加療となった。

その後、しばらく現れなかった。翌年の1月15日受診した。改善して、退院してきたものの、以前からの糖尿病・C型肝炎などがあり、治療を継続していく必要があった。ところが県中への支払いが残っているので大変だという話。お金がなくて受診できていなかったようだ。糖尿病はインシュリン治療が必要、C型肝炎は検査など費用がかかりそうだ。眼科受診も勧めているが、お金がない。聞くと、離婚して、一人暮らしで、実質的に身寄りはない。2ヶ月で145000円ほどの年金生活。元妻宅に部屋を借りて住み、洗濯はコインランドリーという生活。その後も時々腸閉塞になりかけ、治療を継続してきた。

以前に民生委員と生活保護の申請を行ったことがあるようだが、収入面でだめと言われたようだ。2月13日、今回は、家賃証明を書いてもらい、再び申請することになる。

担当は女性の徳本敏子さん。診療所からも電話を入れ、申請を受け付けると確認する。このとき、平成20年度の生活保護実施要領でも申請書を渡すことになっていると話す。本人の話でも役場に申請を受け付けてもらった。3月3日に地方局の面接になっているとうれしそうに言っていた。

3月16日、受診。生活保護はだめだったとうなだれ、血圧も高い。念のため、役場に確認すると、仲島昌二係長が出た。担当の徳本に確認すると、地方局と話をして、納得して帰られたと言う。冗談じゃない、落ち込んで診療所にも顔を出せず、血圧も上昇していたのだ。地方局の高橋係長に話すと申請書は出ていない、相談して生活保護の認定は難しいと答えたまでと言う。もう一度、仲島係長に確認する。申請書は書いていないと!これから本人に会いにいき、説明して書いてもらうということになった。

3月17日、本人受診。昨日、仲島係長が来て、話を聞き、申請書を出していないことが初めてわかったという。そして、申請書を出したのかと尋ねると、出していないと。その理由は出しても絶対にだめだからと仲島係長に言われたからとのこと。つまり、仲島係長は本人宅に行き、申請書を書くようには説明せず、だめだ、だめだを繰り返しただけであった。

午後1時半ごろ、役場福祉課に行き、本文書で経過を説明し、要望を伝えた。要望は聞き入れられ、実施されることとなった。後日窓口を訪れ確認する予定である。

午後5時ごろ、地方局の高橋道明係長に電話をかけ、申請の意思を確認したのかと聞く。生活保護の原則・原理を説明し、申請の意思がありますかと尋ねたら申請の意思はないと答えたので申請書を交付しなかった、申請権を侵害していないと答える。電話応答の中で面談とは申請の意思をぶち壊すためのものだと強く感じた。

3月18日午前10時ごろ、Oさん受診時に尋ねると、地方局との面談は3月3日の午後2時から5時前まで及び、高橋係長と若い男性の二人と話した。家賃は誰が決めたとか、もっと安くできないのかと言われた。最終的に、「この状況だったら、絶対に生活保護はだめです。今の年金でやっていけるのではないですか」と言われて、ショックで自宅に戻った。生活保護の申請の意思を確認されることは全くなかった。また、昨日(3/17)松前町福祉課の仲島係長が自宅に来て、初めて生活保護申請の意志があるかを確認された。それも2回も確認された。これが初めて役人から確認されたものである。ここで再度Oさんに確かめてみた。「裁判所で聞かれても、高橋係長とのやり取り、仲島係長のやり取りは、ここで答えたことに相違ないと言えますか?」「はい、間違いないです」と答えた。

3月19日、福祉課に電話したところ、しばらく休んでいた徳本さんが出たため、Oさんと中予地方局高橋係長との面談について聞いた。すると、徳本さんのはっきりとした記憶では、Oさんは申請されたいと言われていると伝えたうえで、面談日程を調整し、自分と高橋係長と地方局の若い職員とOさんとで3月3日に面談したとのこと。それは、2月の段階で、徳本さんと私との話で、この件は申請だからと話を聞いていたので間違いないとのことだった。つまり、生活保護申請の意思を確実に地方局に伝えて面談を持ったのですと語った。また、松前町福祉課で生活保護についての相談をする場合、資産があったり、収入が多かったり、明らかに要件に当たらないときには、それを説明し面談を終えるという。地方局に面談を上げる場合は、明らかに申請の意思がある場合や、生活保護になるかどうか微妙な場合に面談日程を調整し、実施しているとのことであった。

県議会議員とのやり取り:愛媛県中予地方局が絡むので、環境保健福祉委員会に属する県議会議員に連絡し、仲介してもらうことにする。そこで、以下の点について、中予地方局から文書で回答をもらうように依頼した。

1.環境保健福祉委員会での討議に付するため、以下について文書化して欲しい。

2.Oさんの件で、松前町福祉課生活保護担当職員からの面談日程調整の連絡について、
 いつごろ連絡があったか?
 面談目的は何か?
 松前町福祉課での面談結果はどのように伝えられていたか?
 生活保護申請があったとき、松前町福祉課でも面談しており、
 その結果を元に地方局との面談に至っている。
 明らかに生活保護受給者の要件に当たらない場合のふるい落としを町村単位で実施しているようである。
 では、どういった場合、地方局との面談となるのか?

3.Oさんとの面談について
 いつ行われたか?日時と開始時間、終了時間を教えて欲しい。
 同席者は誰か?それぞれどのような役割を担ったか?
 Oさんに生活保護申請の意思を感じたか、感じなかったか?

4.面談者の福祉関連の資格を明らかにして欲しい

5.Oさんに生活保護申請の意思があるかどうか感じ取る福祉専門家としての技量があるかどうかについてどう考えるか?

 県議会議員からは、「月曜日にさっそく聞いてみます。ただ、文章化はしないと思います。はじめからあきらめてはいけないのですが、これまでの経験で、彼らはそれを絶対と言っていいほどやらないのです」ということだった。

 県議会議員から3月25日に途中経過の報告あり。

 「今、地方局に電話をしました。地方局地域福祉課、生活保護グループの森さんが対応しました。高橋係長はるすでした。今日、午前中にOさんが来られて、松前町役場で高橋、森両名が、役場の担当と一緒に対応したということです。大まかに現在の問題点は2点のようです。1点目は同居人、元妻との関係です。元妻に養ってもらえるのではないかということなのか?と思います。もう1点は、「資産」についてです。今すんでいる家は登記上では元妻のものになっていますが、Oさんは登記の変更に同意したことはなく、自分のものであると主張しているといいます。そこで、4月5日に、松前町の法律無料相談を受けることを進めて、すでに時間の予約もとったそうです。もし、今すんでいる家が、Oさんのものなら、県の社協が、上限500万円?位のお金を貸してくれるそうです。これを、リバースモゲージというそうですが。弁護士と話した後で、県職員としては、元妻と同席の上、生活保護について、相談すると言っています。以上のような話でしたが、御提案くださったような質問にはいたりませんでした。御病状が良くないので、早く進めてくれるよう依頼し、また連絡をしますということで、電話を終わりました。以上、今日のところでの御報告です。今後とも御指導くださいませ。」

 3月25日、Oさんが受診。3月24日に中予地方局の担当者である、高橋・森の両名と松前町福祉課の徳本とで面談があった。どういった面談だったのかを聞くと、高橋係長から元妻に養ってもらえないのかとか、自分で建てた家に住んで名義が元妻だからといって2万7千円の家賃を払うのかとか、その値段は誰が決めたのか、安くしてもらえば、生活と医療費がまかなえるのではないかなど同じことはかりの繰り返しで3時間。印環を持って来いと松前町役場の職員に言われていたのに、申請の話は一切なし。「前回、申請の話は一言も無かったのに、私が申請しませんと言ったと高橋係長が盛次先生などに言っているが、そんなことはない。」と言うと、「私は申請の意志がないとOさんから聞きました。」と高橋係長は平気でうそをつく。本当に馬鹿にしている。元妻を連れてきて、次の面接をすると言うが、そんなことできない。ほとほと疲れたと語った。

 3月26日、Oさんが受診する。もう地方局の職員と話すのはいやだ。とても疲れた。血糖値はいいものの血圧が上がっている。当診療所の受付職員が協力して、生活保護申請書を書く。一人では視力障害のために申請書の記載事項が見えないためだ。

この前に、離婚した奥さんとの経緯を聞く。Oさんのかつての仕事は選果機の据付作業を行っていたようだ。現在は倒産した会社で九州などへ出張しての仕事が多かった。現在妻の名義となっている居宅は14年前に建てたものである。当時の名義は、Oさん。数年後、熊本で仕事をしているときに妻から名義を変えたいと言ってきた。何の意味かわからなかったが、了承した。松前町に戻ってきたら、離婚して、再婚し、自分が養子に入った形になっており、名前もO 清から妻の姓である富永 清に変わっていた。その頃からだと思うがギクシャクして今から5年前に離婚した。離婚協議では、土地・建物は妻の所有となった。その後、行くところもなく、ずるずると居座っている形になった。昨年からは家賃を払うことになり、賃貸人は妻の連れ子である。食事は外食で、ほとんど弁当を買っており、4.5畳の部屋と、トイレは共同で使っている。

3月27日の県議からの報告。

お世話様です。地方局に電話して、森、高橋両名と話しました。今日、Oさんが申請に来られたそうです。書類に不備があったため、書き込みをするように話したそうですが、Oさんは「帰って書いてくる」といわれてもってかえられたそうです。そこで書き込めるような問題ではあったそうですが。(真偽のほどはわかりません):注(松前町役場福祉課に提出した) 申請書が出されたら、調査と審査に入るということでした。私は「それでは、申請書を渡さなかったというのは調査にもはいるつもりがなかったということですね」と言いましたら、高橋係長は「今までは申請の意志がなかったということです」と言われたので、私「三月3日に訪ねた時には既に申請の意思があったと聞いています」。とにかく、Oさんが「申請はしません」といった、たぶんそう言わせたからという理由で、今日まで、なにやかにやと理屈をつけて、受付を引き伸ばしてきたのでしょう。盛次さんが、人権問題だと言われる実態が分かったように思いました。

今日、聞いた情報の断片ですが、Oさんは、資産の譲渡については、実印を押した記憶はないと言われているそうです。また、元妻の前の夫の息子に資産が渡るようなことをするはずがなく、実子の娘さんが資産の放棄に同意するはずはないことから、家の所有権が元妻に渡ったことは疑念が残るというようなことを言っていました。もし、万が一そうであるとしても、申請の意思があり治療費が払えないために医療機関にかかれないでいる人を救済するのが、生活保護なのではないかと問いかけました。つまり、「資産の譲渡に疑念があるとして、弁護士に援護してもらっても、裁判で決着がつくのは何年も先だということは確かであり、Oさんの現在の窮状を何とかするのがあなたたちの仕事でしょう」と問い詰めましたら、答えは返ってきませんでした。

ほんとうに、この人たちは「確信犯」なのだと思いました。また、Oさんが住居費を払っていることについて、元妻らから言われたことではなく、Oさんが自分から自発的に払っているということで、それなら払わずに済むのではないかというようなことを、言っていました。私は「誰でも払わなくてよいものを、自分から払う、しかも困窮している人が払うというのは、よほどの事情があるとは考えないのですか?その事情を調べましたか?」といいましたが、これに対する返事もありませんでした。生活保護の現況が少しずつ見えてきます。今後ともよろしくお願いします。

3月30日、Oさん受診。記載不備な点を修正して、今朝、松前町役場福祉課に生活保護申請書を提出してきた。調査し、決定が出るまで1ヶ月かかると言われた。もう地方局の二人と話したくない。普通の人だったら絶対に申請を諦めるだろう。本当に疲れたと。

4月23日、中予地方局が自宅に調査に来る。元妻にしつこく質問し、家賃をもらってないとの言質を取られる。実際には、生活費がないため、家賃を払えず、待ってもらっている状態だったが、聞き入れられず。

4月28日に生活保護申請は却下された。その理由は、賃貸契約は形式だけであり、家賃を払っておらず、それなら最低生活費を収入が上回るからというものだった。

今後、賃貸住宅を探し、実際に移り住む予定。

6月に年金を受け取り、その足で賃貸住宅を探す。診療所近くに家賃26000円のアパートを探し、契約。お金がなくなったので、生活保護を申請。今回はすんなりと認められ、6月25日より生活保護となった。医療費も無料になり、糖尿病の検査もできたし、念願の白内障の手術も9月に予定された。

問 題 点

ここの時点での問題点を挙げておく。まず何度も申請書を渡すように、申請を受け付けるようにと言っていたのに、申請書すら渡していなかった。徳本さんは申請書を書いてもらいますと私には連絡してきたが、うそをついていた。公務員の信義違反である。

松前町福祉課も、松山地方局も申請の意思を感じながらも申請書を渡さなかった。厚労省の通達では、申請書を渡すようになっているのに、どちらも相談のみでしかもはねつけることに主眼が置かれている。また、当人にとっては申請したが却下されたと誤解を生むような対応となっている。悪意としか考えようがない。憲法25条の主旨も理解しておらないと考えられ、貧乏人の申請する権利を踏みにじった。説明義務もあるにもかかわらず義務を果たしていない。北九州市と変わらない対応に松前町の同じ住民として幻滅する。住民票の申請用紙はちゃんと町民課に置いてあるのに生活保護の申請書は福祉課に置いていない。これも悪意の表れである。

松前町も地方局も担当者は福祉について社会福祉士などの国家資格を有していない。素人である。教育も不十分であるところに問題がある。福祉の質の保障の問題である。第一線の相談員には社会福祉士を当てるべきである。

最も問題であるのは、中予地方局高橋係長のうそ。申請書を渡さないことをOさんが申請しないと言っているからとありもしないことを、本人、県議、私に語って平気である点である。

改善の要望

まず、Oさんに謝罪を求めたい。次にきちんと申請を受け付け、妥当な審査をすべきだ。システムも改善すべきである。申請する住民にわかりやすいように、パンフレットを作り、窓口に申請用紙を設置すること。松前町と地方局の2重面接を取りやめ、松前町福祉課は申請のみを受け付けること。

この時点での感想

ぬくもりなんか何にもない。かつて、精神病院を退院してアパートで暮らす人が生活保護で暮らすことになったことを精神病院の労働組合の書記長は「私たちの税金が上がります」と苦々しく言っていたことを思い出した。組合運動を司っている人でもそう思うのかと耳を疑った。それが年金暮らしなら許せるのだろうか?スウェーデンで年金額を引き上げたら生活保護受給者が1/5になった。政策でどうにでもなることに過ぎない。私は開業することで高額納税者になった。しかし、弱者を切り捨てるような税の運用だと払いたくない。絶対に払いたくない。人を助けるため、連帯のために税を納入するものだと思っている。

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